ケース面接のトレーニング 【概要編】

コンサルティングファームのケース面接は、論理的思考力や問題解決能力を試す重要な関門ですが、準備することで目に見えて評価を上げることができるものでもあります。
今回は転職活動において大きなハードル、心して準備しなければならない「ケース面接」について、ざーーーっくり解説します。
みなさんの準備の初めの一歩として、まずは読んでみてください。
ケース面接の2つのタイプ:推定型と問題解決型
ケース面接には大きく分けると二つのタイプに分けられます。
ひとつは推定型、ひとつは問題解決型と名付けております。
これらは2つのタイプのミックスされた形でも出題することは可能です。そういう意味では、ミックス型もひとつのタイプとして数えれば3タイプです。
ただ、準備するときはミックス型をあえて準備する必要はないかな、と考えています。
そのため、大きくは2つのタイプだと考えていいと思います。
推定型ケース(フェルミ推定)
フェルミ推定、という言葉をご存知でしょうか?まぁまぁ一般的にはなってきましたが、簡単に定義します。
「瞬間的には答えの見当がつかない問題に対し、いかに論理的にアプローチし、答えを導き出すかを試すもの」とでも定義しておきましょう。
ただ、例を挙げた方が早いですかね。
例えば、「日本にガソリンスタンドはいくつあるか?」「日本では毎年何枚のトランクスが売れているか?」といった一見クイズのような問題です。
重要なのは、正確な数字を出すことではなく、その思考プロセスと論理構築力が評価される点です。
問題解決型ケース
実際のビジネス課題を想定した前提条件の中で、数字に基づいた論理的な検証を行い、取るべき戦略を考案する問題です。
こちらも推定型と同様に、回答の「正解」そのものよりも、論理的に答えを導き出す過程が重視されます。
例えば、「外資系高級ボールペンメーカーがとるべき戦略は?」「A社は東京を拠点とするIT教育サービス会社だが、競合の参入に対し取るべき戦略は何か?」「バスケットボールの競技人口を増やすには?」といった具体的なビジネスをひとつ取り上げて、売上や利益を拡大するためのシナリオを検討することが求められます。
推定型ケース攻略の5ステップ
まずは、推定型ケースを攻略するために、どういうフレームワークで考えていくかを説明します。
あくまでフレームワークなので、場合によってはフレームワークを大きく逸脱しても構いません。
「基本」や「指針」として考えていただければと存じます。
フレームワークとしては、以下の5つのステップを基本としてください。
前提条件の確認
まずは、「前提条件の確認」です。問題内の語句の定義を明確にすることや、計算に含める範囲はどこまでか、など求められているテーマの細部を確認します。
例えば、「カバン」がテーマに含まれていたとしましょう。
「カバン」とはどこまでのことを指すでしょうか?リュックやボストンバッグ、スーツケースまで含めるでしょうか?
そのような細部を確認します。
このステップを怠ると、その後の計算が無意味になってしまう可能性があったり、大きな意味のない計算に大変な時間を割いてしまったりするので、ともて重要です。
基本式の設定
最も基本となる「式」を設定します。
この「式」の設定が、一番のカギになります。
例えば、「日本にカバンはいくつあるか?」というテーマだった場合、「日本の人口 × 1人あたり平均いくつカバンを所有しているか」が基本式となります。
人口をベースに考えれば何とかなるタイプの推定型ケースのテーマはとても多いです。
すごく極端な言い方をすると、「人口と面積でほとんどなんとかなる」というレベルには、昨今のケース面接対策というのは成熟しつつあります。
因数分解
設定した基本式ではまだまだ精度が荒すぎて、あてずっぽうに過ぎないものです。
なので、これを分解します。
例えば「日本の人口」を「男性と女性」「都会と田舎」「年齢層」などの因数に分解します。
カバンの所有数を推定する例では、「1人あたりの平均所有数」を「年齢」と「性別」で分解し、それぞれの平均所有数と所有率、人口を掛け合わせることで求めます。
この際、「男性よりも女性が多く所有」「低年齢ほど多く所有」といった自然な傾斜配分を行うことが重要です。
どこまで分解するかは「ほどほどに終わらせる」ことが肝要で、深掘りしすぎると時間切れのリスクが高まります。
ざっくり、20歳以下、21~40歳、41~60歳、61歳以上の4つの年齢層に分け、それぞれ男女にて考えることで、高い精度がえられそうです。
計算実行
因数分解した各要素に数字を代入し、計算を行います。
スピードと正確性を高めるため、端数の切り上げ・切り下げを適宜行います。
ただし、小さな誤差が大きな誤差を生む変数もあるため、概算しすぎない注意も必要です。
人口や世帯数など、頻出の数値は知識として覚えておくと非常に有効です。
また、先述の通り、「人口と面積で割となんとかなる」という現実があるので、面積に関する頻出数値も覚えておくことが有効です。
現実性検証
計算結果が現実的に「まとも」かどうかを検証します。
明らかに数字がおかしい場合は、計算ミスを確認するか、さらに因数分解を行って精度を高めます。
基本式自体を疑うことは、再計算が必要となり時間切れのリスクを高めるため、推奨されません。
この現実性検証のために、わかりやすい数字も覚えておくことといいでしょう。
例えば、日本にある携帯電話の数、コンビニエンスストアの数などを知っておくことは、現実性を検証する上で、大きな指針になってくれるはずです。
問題解決型ケース攻略の5ステップ
問題解決型ケースも同様に5つのステップで構成されます。
今回は、子供向けに超人気の魅力的なおまけつきセットメニューを強みに持つ、1971年日本第一号店を創業した某ハンバーガーチェーンの売上拡大、というテーマだったと仮定して、5つのステップを見ていきましょう。
前提条件の確認
ここでもやはり、まずは、前提条件の確認です。
推定型と同じです。
提示される「ふわふわ」としたテーマに対して、あいまいな語句を定義し、自身がどういう立場で課題を解決するのかなどを細部まで確認します。
例題のテーマである「某ハンバーガーチェーンの売上を上げるには?」であれば、5W1H(What, Where, When, Who, How much)などを活用して網羅的に前提条件を確認します。
網羅的な確認には、フレームワークの活用が効率的です。
特に、「いつまでに」「どのぐらい」売上を拡大するのか?はとても重要です。
期間によって、打てる施策に限りがあります。
また、売上拡大の規模によっては、よりダイナミックな施策を打たなければならなくなります。
構造化
次は、構造化です。
ちょっと聞きなれない言葉ですが、推定型の基本式に該当するものを作ると考えてください。
例題テーマであれば、求められているのは「売上」です。
売上を算出するに至る本質的な式を立式します。
例えば「店舗数 × 1店舗あたりの客数 × 客単価」と構造化することができます。
このひとつ一つの指標が向上すれば、売上はおのずと拡大することになります。
ただ、これだけではちょっと具体的な施策に落とし込むのは難しいですね…。
「店舗数」にしても「客単価」にしても「1店舗当たりの客数」にしても、向上できるのであれば「端からやってるよ!」とツッコミを受けそうです。
そこで、客数を時間帯と曜日ごとの「混雑度」で構造化して分析します。
縦軸に「朝、昼、夜」の3マス、横軸に「平日、休日」の2マス、計6マスの票を書いてみましょう。
その中に、混雑度を「〇、△、✕」などで書いてみてください。
どうでしょう?施策を考える上での「論理的・合理的」な検討材料ができた気がしませんか?
この構造化なしに考案された施策は「勘」や「思い付き」になってしまうため、問題・テーマを具体化し、「構造化」します。
ボトルネックの特定
構造化した売上に関わる指標の中で、目的達成に最も効果的な「ボトルネック」を特定します。
もうおわかりですね?先に作成した6マスの中であなたが「✕」を付けた箇所、それがまさにボトルネックです。
もし✕が複数あるのであれば、最も「改善余地が大きく」、かつ「感度が高い」と考えられるポイントを選んでもいいし、複数の時間帯・曜日に対して施策を検討しても構いません。
某ハンバーガーチェーンの例題テーマであれば、恐らくみなさん「夜の時間帯の客数」「平日の客数」が課題であると見て取れるのではないでしょうか?
お昼時はいつも混んでいますからね。
ちょっと変わり種としては、「休日混雑時に失われた客数」がボトルネックとして見いだせると思います。
施策の検討
特定したボトルネックごとに解決に向けた施策を立案します。
ここで注意が必要です。
例題テーマで設定した、某ハンバーガーチェーンさんはとても優秀な会社なので、「夜=男性向けの夜のセットメニュー」、「休日失われた客=モバイルオーダー」など、既に数々の施策を打っておられます。
そういう意味では、某ハンバーガーチェーンさんの例題テーマはケースとしては「きつい」テーマになるのですが、そうでなくても、我々が十数分検討した程度では、奇抜なアイディアは絶対に出てきません。
逆に言えば、「出せる」と思わない方がケースはうまくいきます。
「安いアイディアかな?」「すでに競合の××社がやってたかな…」など変に深く考えると、何も出せなくなってしまって、せっかく積み上げてきた論理性がもやもやになってしまいます。
ただ、せかっくなので、某ハンバーガーチェーンの例であれば、
・平日・夜のアルコール販売
・女性向け夕食メニュー導入
・平日・朝のコーヒー販売強化
・都心部にデリバリー専門店展開
など挙げておきます。まぁ、恐らく某ハンバーガーチェーンさんは既に検討されていてなんらかのシミュレーションで没になったか、規制対応などで難しい・Payしない、とご判断されたと想像します。
施策の評価
これはとても重要です。
検討した施策を「効果」と「実現可能性」の観点から再評価し、優先度をつけます。
某ハンバーガーチェーンの例では、混雑度「✕」がついているところにあてた施策を高く評価してください。
本来であれば、施策の実施のための準備に必要な期間とコストも検討すべきですが、考慮しない場合、効果が大きいものを優先度が高い施策と評価すればいいでしょう。
同程度の効果であれば実現性が容易な方を優先するといった評価軸が用いられます。
ケースに取り組む際の鉄則
最後に、いかに高い論理性を持ち合わせていても、どのタイプのケースに取り組む場合でも、共通して重要な「鉄則」が7つ存在します。
これらの鉄則は、単に問題を解くためだけでなく、面接官との効果的なコミュニケーションを図り、思考プロセスを明確に示す上で不可欠です。
ケース面接は論理性を見るため「だけ」の面接スタイルではありません。
コミュニケーションやストレス耐性などの「振る舞い」も検討材料の一つです。
また、将来の「仕事ぶり」を見るための面接スタイルでもあります。
例え、論理的に少々傷があったとしても、下記の鉄則を踏まえていれば、「なんかいい感じの人材」に見せることは十分可能です。
ぜひ面接前に一目通してみてください。
問題の内容を最後まで聴き、正確に読む
問題の全体像を正確に把握することが、その後の分析の出発点となります。大きなミスをしないためにも、落ち着いて正確に読んでみてください。
問題の要点や細部を面接官に確認した上で進める
特に推定型ケースの「前提条件の確認」において、あいまいな語句の定義や計算に含める範囲などを明確にすることは、その後の計算の精度を大きく左右します。
確認の課程で「面倒そうな要素」を計算から排除してもいいか確認するなど、テクニックとしても使えます。
考えた内容・過程は全てメモを取る
思考の軌跡を記録することで、論理の一貫性を保ち、後で見直しや説明が容易になります。
許されているならばメモはぜひとりましょう。
普段の練習からメモをとる癖をぜひつけてください。
考えている過程を面接官に説明・議論しながら進める
ケース面接はクイズではありません。
ぶっちゃけ推定型ケースの回答など、ぶっとんだ数字でなければ、「桁が同じならOK」ぐらいの緩さで考えておられる面接官が多いのではないでしょうか?
そもそも数字には興味がない、という方もおられるかもしれません。
自身の思考を開示することで、面接官からの(一見つっこみや揚げ足取りに見える)フィードバックやヒントを引き出す機会にもなります。
それらは回答の精度を高めるヒントになります。
適切なタイムマネジメントを行う
限られた時間の中で、各ステップにバランスよく時間を配分し、全体として結論まで導きましょう。
「5分で考えて」という指示があれば、取り合えず5分でゴールまでなんとなくたどり着きましょう。
当然、時間が短ければ荒くてもいいのです。
最後に結論と過程をまとめて話す
考えてきた過程と結論を最後にまとめて話しましょう。
説得力を高めます。
なんとなくかっこいいです。
最後まで強い熱意と前向きな姿勢をアピールする
正直、これが一番重要だと考えています。
困難な課題に対しても粘り強く取り組む姿勢、未知のテーマにあきらめず知恵を絞る、そんなふるまいこそが最も求めあれているといっても過言ではないでしょう。
何度も言いますが、ケース面接はクイズではありません。
間違っていてもいいんです。
面接官からの(一見つっこみや揚げ足取りに見える)フィードバックは正しい道を進むためのアドバイスでありヒントです。
たとえ、疲れた顔の一見感じの悪い面接官が、不機嫌そうに突然割って入ってきたとしても、正しい道に進むためのアドバイスなので、前向きに受け取りましょう。
(一方で、人事採用部門の方へ。そんな面接官に対してトレーニングの実施を、切にお願い申し上げます。)
まとめ
駆け足で説明してみましたが、いかがでしょうか?
概ねこんなステップで進んでいけば、絶対にそれっぽくなります。
あとは、慣れとテクニックもあります。
詳しいレクチャーをご希望の方は、ぜひTY&Partnersのコンサルタントへご連絡ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。