最近よくあるライトなケース面接を解いてみる

ケース面接というと、テーマが決まっていて、冒頭から検討時間が与えられて…と、ある種カッチリとした時間をイメージされる方が多いかもしれません。
しかし、必ずしもケース面接はカッチリと行われるとは限りません。
別の記事で説明していますが、面接という色んなことが起こりえる会話の中では「突発的に始まるケース的な質問」というのも頻繁にあります。
詳細は「ケース面接はありますか?」という質問は回答がとても難しい、というお話」をぜひ読んでください。
「ケース面接を行います」と言われると、「前提条件を確認して、基本式を立てて…」と解いていけばいいとわかるのですが、このような突発型のケース面接では思わず戸惑ってしまって、なかなかうまく回答ができなかった、という経験談をよくお聞きします。
そこで、今回はこの突発的ケースの代表例である「ライトなケース面接」にフォーカスして、どこを端折っていいのか、どのあたりがライトでいいのか、考えてみたいと思います。
別の記事「ケース面接のトレーニング 【概要編】」を読んでから、読み進めていただくと、どこがライトでいいのか、よりイメージを持っていただけると思います。
ライトなケース面接って?
そもそも本来ケース面接とはなんでしょうか?
- 回答時間や検討時間など、タイムマネジメントの指針があらかじめ設定されている
- 参考資料としてマーケットシェアとか市場規模とか市場の成長性に関するデータが提示される
- ディスカッション相手がだれか、どのようなシーンでの会話かといったロールプレイが求められる
などの特徴があります。
このような設定がちゃんと盛り込まれているのは、「どの程度、前提条件を精緻に詰めるか」、「数字をあてはめつつ検討を進めるか」という点で、より厳密なものを意図しているからです。
それに対して、昨今、そこまで精緻な前提条件を詰めることなく、ある種大雑把に始まり、大雑把な回答で問題ないようなケース面接が増えています。
このようなライトなケース面接は突発型ケース面接として提示されることも多く、いきなり出題されて面食らってしまうシーンも多いものです。
「これってケースなの?カジュアルに答えていいの?でもなんかケースっぽい…」っていう質問は、シンプルに断言してしまうとケースっぽく答えた方が無難です。
なぜなら、基本的には論理的な思考力・発想力を持っていることを訴求しておいて、絶対に損がないのがコンサルティング業界だからです。
回答者の個性が出やすく、個人的にはケース面接はライトにスタートした方が「ケース面接で確認したい、候補者の資質の本質」に迫れるのではないか、とすら感じます。
しかも、基本だけ抑えていれば比較的簡単に突破できるものが非常に多いです。
実際にあったケースにあてはめて、考え方を整理してみましょう。
ケース例
「デジタルの発展はホテル業界にとってメリットをもたらすと思いますか?ちょっと考えてみましょう?」というテーマを例題として設定します。
実際に面接の中で出題されたテーマです。
早速、取り掛かってみましょう。
前提条件の確認
まずは、やはり前提条件の確認です。
注意しなければならない語句の定義としては、大きく分けると、
1.デジタル技術
2.ホテル業界
3.メリット
の3つが提示されています。
デジタル技術もホテル業界も、そこまで意味に幅のあるものではないと考えられます。
質問の主旨から、何十年も先まで検討することは求められていないと明らかにわかります。
また、「メリットは?」と聞かれて、その金額的なインパクトを精緻に計算しなくともよいことは十分に理解できます。
重要なこととしては、メリットだけを語ればいい、ということです。
ここがこのテーマがライトである所以ですね。
数字の計算も無理やり挟み込むことはできますが、求められていないと解釈し、先に進みましょう。
注意点
「メリットとは何か?」ということをフワッとさせたままでは前に進めない、ということです。
日常生活でもよくありますよね?
「あの人って仕事できると思う?」とか、「巨人と阪神はどっちが強いチーム?」とか…。
これらはそれぞれ「仕事ができる」「強い」の定義を「構造化」しないと、議論がととのわず、感想やお気持ちの言い合いになってしまいます。
「メリット」を「なんだかよさそうなこと」としていると、いつまでたっても論理的な議論にはなりえません。
メリットを「MECE=もれなくだぶりなく」どう整理・検討するか、ということがもっとも重要なポイントになります。
まかり間違っても、いきなりメリットを列挙し始めてはいけません。
メリットを構造化してみる
メリットを、利益の拡大に貢献する、と定義してみましょう。
「利益はメリットではない」という経営者はいないと思いますし、財務諸表を視点にすることはコンサルタントとして無難と言えると思います。
ここで注意が必要なのは、「利益の拡大」は
1. 売上の向上
2. コストの削減
の2つに因数分解できることです。売上の向上と定義してもいいのですが、精緻な計算が求められていないのであれば、多様な視点から検討できる、「利益の拡大」と定義する方が、やりやすいかもしれません。
さらに構造化してみる
この段階で、「売上向上(コスト削減)におけるメリットは~」と具体的なメリットの検討を初めてしまうのはちょっと悪手です。「MECE感」が足りません。
売上とコストをさらに因数分解してみましょう
1. 売上
1-1. 客数
1-2. 客単価
2. コスト
2-1. 人件費
2-2. 設備費
2-3. 消耗品費
2-4. 水道光熱費
2-5. 広告宣伝費
2-6. 提供飲食品原価
売上は「売上=客数×客単価」です。この「単価×総数」というのは非常に頻出の因数分解なので、ぜひ懐に携えておきましょう。
次に、コスト編です。
私はホテル業界の専門家ではないので、ホテルの損益計算書は見たことがないです…。
なので、コストのところは正直あてずっぽうです。
ホテル/旅館などの事業再生コンサルタントの方が読まれてないことを祈ります。
では、これらの売上とコストを構造化した8つの視点を見渡しながら、「デジタル技術」が貢献しそうなポイントを上げていってみましょう。
具体的なメリットの検討
ここからは正解のない領域になってきますので、みなさんの描くデジタル技術、みなさんのお持ちのホテル業界イメージ、そして、想像力を発揮して、様々検討してみてください。
あくまで例えばですが、
1. 客数の向上に対して:WEBサイト/スマホアプリを通じた便利な予約、会員プラグラムを通じたダイレクトマーケティング
2. 客単価の向上に対して、需要予測などのデータ分析によるダイナミックプライシング
3. 人件費の削減に対して、ロボットコンシュルジュによる受付対応
4. 広告宣伝費の削減に対して、WEBマーケティングによる代理店を通じない直接予約
などいかがでしょうか?他にもより影響度が大きいものはあるかもしれませんが、ちょっと現状の私の持つ知見と発想では思い及びません…。
このように客数の向上、客単価の向上、人件費の削減、広告宣伝費の効率化といった点で、デジタル技術はホテル業界にメリットをもたらす、とわかります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
しっかりとしたテーマや前提条件となる資料やデータが提示されないタイプのケース面接、いわゆる「ライトなケース面接」と呼称して、どうすれば論理的に考察することができるか、を検討してみました。
改めて、前提条件の確認や構造化といったステップが、ライトなものであろうとも非常に重要であることが理解いただけたでしょうか?
もし本格的なアドバイスやご相談があれば、ぜひTY&Partnersコンサルタントへご連絡ください。